ずっと、ずっと考えていた。
僕の愛した人だけが、なぜ変わったのだろうかと。
なぜ気づいたのだろうかと。
僕はその時何を話したか、何がきっかけだったのか、ずっと考えていた。
原因はやはり彼女にある。
他人を変えることはできない。
彼女は、後悔した。
僕の話を聞いていて、気づいた時の様子を覚えている。
ものすごく悔やんだ。自分を罵った。
「私はいったい今まで何をしていたの?!私の人生じゃない!私のお金じゃない!なんとなく大学を出て好きでもない仕事をして、なんのためにもならないオタク趣味に湯水のようにお金をつぎ込んで、私ったら今まで一体何をしていたのよ!!」
彼女は怒っていた。激しく怒りを露わにし、自分自身に怒りをぶつけていた。
「私、変わるわ。もう二度とこんなバカな真似しない。本当は、やりたいと思っていた仕事があったの。これから真面目に勉強する。」
そして、一週間後にはすっかり変わった部屋を見せてくれた。
「オタク趣味で集めたものは全部売り払ったの!池袋に行って全部売ったら、結構まとまったお金になったのよ。このお金は大事に使うわ。勉強するために使う。」
彼女は変わった。僕を叱咤するほどに変わった。
彼女が生まれ変わった原因は、後悔だ。
彼女は悔やんだ。本当に本当に悔やんでいた。
泣くに泣けない。自分のバカさ加減に腹が立つ。
そんな様子だった。
彼女は例に漏れず、社会で奴隷となり、自由時間は遊んでいる人だった。
僕は彼女を愛しているので美化している部分があるのだと思うが、一般的に見れば普通に会社員をしている隠れオタクだったのだろう。
本人もそう言っていたが、これという目的もなく生きている人だった。
僕の話の何に気づいたのかは知らない。
だが少なくとも彼女は僕を信用していた。
僕が彼女に思っていたことは、逆なのかもしれない。
僕以外に話したことがない、という話をしてくれた。
恥ずかしい、と思っていたようだ。みっともない、と。
しかし僕はなんでも受け入れた。
僕は人を受け入れないということはない。
人を受け入れても、悪事は受け入れない。
差別や虐待は受け入れない。何が好きでも何ができなくても、それはどうでもいい。
彼女の全てを受け入れた。それも原因だったのかもしれない。状況の一部として。
受け入れるから愛せるし、素直になるから愛されていると信じられる。
素直に心を開き受け入れれば受け入れるほど、愛は増す。
そして彼女は変わった。
もしかしたら、「愛されたことがないのね」と言っていた彼女の方が、愛されていなかったのかもしれない。
心を開いた彼女は、僕の話を聞いて素直に考えた。
そして、大後悔した。
悔やんでも悔やみきれない、そんな時間をもう二度と過ごせないと。
もう二度と、後悔したくないと思った彼女は、決意して生まれ変わった。
絶望が地獄のゴールだ。
幻想を追いかけていては、極楽浄土に行ける日はやってこないのだ。