日記, 無料

朝、猫が起こしにきた

 今朝、部屋のドアからカリカリと音がした。

 カリカリという音は、きっと猫がドアを開けようとしているのだと思い、僕は観葉植物を日向ぼっこさせるために並べていた手を止めた。

 ドアを開けると、にゃんごろがいた。

 にゃんごろは、娘の猫である。

 娘がずっと一緒にいる猫である。

 「おはよー」と言ってにゃんごろが入ってきた。

 僕もにゃんごろに「おはよう」と言って頭をなでる。

 にゃんごろは、娘からの伝言を伝えた。

 「きのうはおこってごめんねって!」

 昨日?そうか、昨夜のことか、と思い出した。

 娘が風呂に入らずに寝てしまったので、僕が無理やり起こして連れて行ったのだ。

 娘は寝ている時に起こされるとものすごく機嫌が悪くなる。
 昨夜も非常に不機嫌になった。

 結局、怒って風呂の栓を抜いてしまい、そのまま黙って寝てしまったのだ。

 その程度僕は気にしない。
 眠いもんだから、顔だけ洗って寝ちゃったよ。と思っていた。
 朝起きて、昨夜僕に怒っていたことを思い出したのだろう。

 「いいよ、俺もせっかく入れてくれたのに遅くなったんだもんね。」

 とにゃんごろに言うと、娘も「おはよー」と言って出てきた。

 だいずは昨日僕と一緒にいたので、みんなで「おはよー」と言って抱き合った。

 うちの朝は、平和だ。
 朝からみんなにこにこしている。

 「今日はいい天気になりそうだなあ。」

 そう言って、残りの観葉植物を並べた。
 この時期は寒いので、植物も夏ほど伸びない。
 外にもあまり出していない。

 小さなものが多いが、僕の部屋には観葉植物が八個ほど並んでいる。

 「きっと葉っぱたちがいるから、部屋も空気がきれいになるんだろうな。」

 「葉っぱたちが息しててくれるもんね。」

 そんな話をしていた。

 

 朝、起きたら家族がいる。
 それだけで幸せだと僕は思っている。

 こんな簡単なことなのに、それ以外のことの方が大変なことは避けられないことが多いのに、この程度のことがどうしてできないのだろうか。

 なぜみんな仲良く生きるくらいの簡単なことが、できないのだろうか。

 優劣で勝つ方が余程難しいし、金や物など誰もが手に入れられるものではないのに、そんな難しいことに挑戦して、どうして誰もが手に入れられる当たり前のものは捨ててしまうのだろうか。

 自分の生まれた家のことを思い出すと、本当に酷かった。

 体に傷跡が残っていることなど、ちっとも思い出すことは無かった。
 そういえば、覚えてもいないくらい小さい頃のことだったんだな、と先日思い返していた。

 自分の人生で自分が手に入れたものだから、平和なのだ。

 もうあんな家は沢山だ、と思った僕が作っているから、平和なのだ。

 あの家でなんとか認められようなどと思わなかった。

 僕一人が頑張ってどうにかなるものではない。
 家族は一家の長たる者が、どうあるかで決まってしまう。

 だから僕は自分が作る時には、きっと平和な家庭にしようと決めていた。

 家族は誰か一人のためにあるのではない。
 皆のためにあるのだ。

 皆で幸せになるためにあるのだ。

 「そうだよ!それなのにこいつはさあ!」

 と支配したがるような人間さえいなければ、平和な家族など簡単に作れるのだ。
 色々な問題があったとしても、皆で仲良く山あり谷ありで生きていくことは、誰にだってできるのだ。

 「家や資産なんかあっても何にもならない。ただ当たり前に、普通の家族であることが、どれほど難しいことか…。」

 幼い頃の母の言葉である。

 お母さん、俺は手に入れたよ。
 他には確かに何もないが、ただ当たり前の、普通の家族を手に入れたよ。

 俺は乗り越えた。
 親を超えた。

 そして次の代は、この俺だ。

 僕は愛されていた。
 なぜならば、母は一族の遺志を僕にだけ託していたからだ。

 母にはどうにもできないものは、僕に託された。

 母は、これが欲しかったのだ。

 ただ当たり前に、普通の家族であることが、母の夢だったのだ。

 なんて幸せなのだろう。
 これが家族というものなのだ。

 特に何もない。
 だが、これ以上の幸せはない。何の争いも起きない本当の味方が、ここにだけは必ずいる。

 それが家族なのだ。