日記, 無料

殺人靴下

 またしてもやられるところであった。

 日記である。

 殺人靴下を知っているだろうか。
 その名の通り、人を殺す靴下である。

 その名をメディキュットと呼ぶらしい。
 通り名だろうか。

 過去、何年も前に、いつだか忘れたくらい前に、使ったことがあった。

 最初は「これはすごい!」と喜んだ。
 足のだるさが取れていく、圧迫によって楽になっていく、そんな感覚だったからだ。

 だが、僕は安易に考えていたのだ。

 そのまま寝てしまった。

 翌日本当に大変なことになった。

 足がうっ血していたのだ。

 指先が紫になっていた。

 危うく靴下に殺されるところであった。

 そして、さっきまた、それを発見した。

 時間を短くすればいいのだ、と思って、また安易にも履いてしまった。

 これで足が楽になるかなと思った。

 だが、作業に夢中になっているうちに、足がしびれてきた。

 まただ。

 一度ならず、二度までも。

 こいつは僕を殺しにかかってきた。

 こいつとは、友達にはなれそうにない。

 正にスパイ靴下。神経症的である。

 まるで僕を健康に導いてくれるような顔をして、殺しにかかってくるのだ。

 それも寝ている間に。

 永遠の眠りにつかせようとする。恐ろしい靴下だ。

 なぜ僕はもう一度これを履いてしまったのだろうか?

 「ちょっとならいいよね」

 と思ってしまったのは、前回楽になってくると思ったせいだ。

 一度の当たりが忘れられないギャンブラーになってしまっていた。

 これは危険な代物だと、あれほど体験して知ったのに。

 人間と愚かなものだ。

 足が気になっていたからだろうか。

 足と言うか、足に生えている毛。俗に言うかわいげである。

 娘がいると、髪の毛があちこちに落ちる。
 育毛しなくてはならないのではないかと心配になるくらいだ。
 そして掃除が面倒になった。

 僕はそんなに落ちないのにな、と思っていたが、実際には短いから目立たないだけなのかもしれない。
 そして、僕の場合は髪の毛以外のものが落ちていると気づいた。

 人のことは言えないものだ。
 他人のことを批難するものではない。

 髪の毛は落ちなくても、かわいげは落ちているかもしれないのだから。

 そんなことを考えて床を拭いていた時に、近くに置いてあった殺人靴下が目に入ったのだ。

 こいつには、なんとなく履きたくなるような魔力がこもっているようだ。

 娘には「女用だからダメなんじゃない?」と言われたが、僕のことだ、つい果敢にチャレンジしてしまう。

 確かに、娘の言うとおりだ。

 ひよこがかわいいと思って、娘と一緒にどこかの雑貨屋で購入したリラックマさんのひよこルームソックス。
 あれも履いたらサイズが合わないからか、せっかく顔が大きく描かれているものであったのに、何者かわからない、あまり可愛くない感じに伸びてしまった。

 娘が大喜びで僕をバカにしていたものだ。

 まったく子供は困ったものだ。

 そんな失敗を踏まえて尚、僕に履かせてくるこの靴下らしき何か。

 危険極まりない代物だった。

 医療業界の危機に警鐘を鳴らしまくらねばならないだろう。

 一般人にこんな危険な代物を、まるで体を楽にするかのような体で売りさばいているのだ。

 しかも、今日気づいたのだが、あまりにも足が凝っている状態では、あまり効かないのだ。

 最早これは、純粋な殺人靴下。

 靴下界のジャック・ザ・リッパーである。

 人斬り以蔵かもしれない。

 とにかく、そんな危険な代物と先ほど戦い、そして僕はなんとか生き延びた。

 人生はドラマである。

 日常的にこんな出来事もあるのだ。

 僕も浅はかであった。

 明日はシンカリオン炭酸入浴剤を使用し、体を癒すことにしよう。